この空を羽ばたく鳥のように。
うちの屋敷から右隣の木本家を過ぎるとすぐ、お城西出丸の内堀に沿った大町通りに出る。
大町通りに出ると道を右に曲がり、家の裏手をまわるように すぐまた次の角を右に折れる。
そうして左側手前二軒目の高木さまのお屋敷の門をくぐる。
この家のお婆さまが和裁に長けていて、若い娘達を集めて裁縫を教えて下さっているのだ。
「ごめんくなんしょ。よろしくお願いします」
挨拶してお部屋の一角にお邪魔すると、もうほとんどの娘が集まっていて、各々で針を進めていた。
まだお師匠さまが来られていないせいか、あちらこちらで楽しく世間話に花を咲かせる軽やかな談笑が沸き立つ。
私も空いている場所に座り、いそいそと風呂敷に包んでいた裁縫箱を取り出すと仕立て途中の浴衣に針を通し始めた。
と、襖を開けてお師匠さまがお出ましになる。
その姿が現れると、それまで賑やかだった部屋の中が水を打ったように静まりかえった。
今日のお師匠さまはおひとりではなかった。
後ろに小柄な娘さんを伴っている。
「よろしくお願い致します」
皆が改まった姿勢で挨拶すると、お師匠さまはそれに応え頷いてから、となりにいる娘さんを示して皆に紹介した。
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