いつか、星の数よりもっと

「はい、トッキー。アイス」

緋咲は貴時にアイスクリームを返そうとして、思い付いてパクッとひと口食べた。
甘いキャラメルでも隠しきれない濃厚なミルク味がして顔をしかめる。

「これ、おいしくない」

「だから言ったでしょ」

緋咲からアイスクリームを受け取って、貴時はふたたび食べ始めた。

「ねえ、あれ、どういう意味? 『せいしんせいい』?」

「そう、そのまま。『誠心誠意』のダジャレ」

「なるほどね。『勝ち星の為に、真心を尽くす』?」

「まあ、そんな感じ」

「あの子は、あれ見て頑張るんだね」

「あの色紙に価値が出るように、俺も頑張るよ」

すでに見えなくなった背中を、緋咲は見つめる。

「何年生くらいかな」

「六年生だって言ってた」

指導した相手のことは頭に残っているようで貴時はすぐさま答える。

「トッキーより5つ下か。そんなに離れてないんだね」

憧れをいっぱいに含んだ目を思い出して、緋咲はつぶやいた。
十年後、あの子は22、貴時は27。
ちょうどいい。

「ひーちゃんにも六年生のときがあったよ」

貴時は、ふっと上を見上げて言った。

「もう覚えてない。昔過ぎて」

「黒い髪だった」

「さすがに小学生でカラーはしてなかったからね」

「きれいな髪だったよ」

貴時の声の中にさっきとは違う色味を感じて緋咲は手を止める。

「ひーちゃん、溶けてる」

手の甲を流れていくブルーベリーヨーグルトはもうスプーンでは止められない。
仕方なく直接口をつけて、会話もせずに食べ切った。

「手、洗ってくるね」

貴時は窓の外に広がる夕空をぼんやり見ながら、小さくうなずいた。





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