不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
胸の中で彼の甘くこもった声が響き、私も呼吸が浅くなっていった。

「で、でも、久遠くん、全然そういうことしてこないし……キスも、嫌いだって言ってたから、てっきり……」

「は?」

「てっきり、私とそういうことしたくないんだと思ってた……」

正直に呟くと、久遠くんは胸から顔を上げ、カッと私を睨み付けてきた。

彼の上半身が持ち上がり、今度は私を壁際に追い詰めて、無理やり口を塞がれる。

素直にそれを受け入れたが、頭の後ろを壁に押し付けられる感覚に、彼の唇から逃げるように体を動かしていた。

「逃げないって言ったろ、美和子っ……」

「ん、ん……逃げて、ないって」

息を上げながら耐えている私を見て、彼は一度唇を解放した。
彼がキスが嫌いと言ったのは確かだ。私はそのことを視線で咎めると、久遠くんは獲物を前にした野獣の目のまま、ボソボソと話し始める。

「……今までの女の顔なんか覚えてねぇ。名前も知らねぇ。全員、美和子だと思って抱いてた。お前にしたくてもできないことを発散させることしか考えてなかった。……だから、キスは邪魔だった。あれは味がする。その女特有の。美和子以外の女の味がしてると思うと、吐き気がすんだよ。美和子じゃないって目が覚めて、虚しくなって……」

「く、久遠くん……」

「美和子とはしたいに決まってるだろ。……バカにしてんのか、俺のこと」
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