この世に生まれてくれてありがとう〜形のない贈り物〜
次の日、真紀子は誠一郎の家へと向かった。

「あっ……」

真紀子の姿を見つけると、玄関の掃除をしていた父がすぐに真紀子に駆け寄った。

「真紀子さん、お久しぶりです。お元気にしていましたか?」

真紀子は「そうね…」と曖昧に笑い、祖父母がいるかどうかを訊ねた。

「はい、いますよ」

「少し大切なお話があるの。よかったら、あなたも聞いてくれる?」

「はい」

真紀子と父は家の中へと入る。祖父母は驚いたような表情を見せたが、すぐにお茶を出し真紀子を座らせた。

「実は、妊娠したんです」

全員が席につくと、真紀子はうつむきながら言った。祖父母は驚いて顔を見合わせ、父も「えっ!?」と声を上げる。

「産むか中絶をするか、今は考えています。誠一郎くんはもう……」

真紀子は涙を拭う。

「先生は、どちらの選択を選んでもいいと仰っていました。……このことは伝えるべきだと思ってここに来ました」

「……話してくれて、ありがとう」

祖母が真紀子の手をそっと包む。真紀子の目からさらに涙がこぼれた。
< 15 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop