雪の光


パタン、とドアが閉じると窓の外を見た。


もう日が暮れてしまいそうだ。


澄んだ群青やダークオレンジが木や建物を影絵のように浮き彫りにする。


彗はまだ生きている。


手が温かい。


生きている人にしか与えられない温みを持っている。


あまりに皮肉すぎる。


人が苦しむのを常に傍観していた彗が、苦しむ張本人になってしまうなんて。


「……馬鹿じゃないの……」


出た声はびっくりするほど弱々しい。


もう一度、強く握る。


「……起きてよ、起きてよ」


今さら、これは何かのドッキリなんじゃないかと思い出している。


彗はただ、演技をしているだけで『彗、生きてるの?』と私が訊いたら彗はむっくり起き上がって『人が死ぬ時ってこんな気持ちなんだ』とか言って終わる気がする。


そうあれたらどんなにいいか。


まだ話して3ヶ月しか経っていないのに、私は、思っている以上に彗が大切だった。


< 105 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop