雪の光
「これから、第96回第二高等学校卒業式を始めます。
卒業証書、授与」
その言葉で一斉に礼をする。
私は今日、この高校を卒業する。
座って校長先生の話を聞いていると、いろんなことを思い出した。
知り合いがほとんどいない入学式。
初めて友達になった千夏。
苦しかった部活。
あの息苦しい教室。
友人関係に疲れ果てた私。
眠れなかった夜。
答えのわからない問題を当てられた時。
寝てしまって先生に注意された時。
水を被った時。
瞬達と食べた昼ごはん。
キスされた屋上。
心が戻った時。
猛勉強をした教室。
いろんなことを思い出して涙がこみ上げてくるとよく聞くけれど、涙は出なかった。
その代わり、笑みが零れていた。
自分でも気付かない間に。
体育館の窓から差し込んでくる光を見て、魔法が溶けていくような感覚を私は1人で味わっていた。