雪の光


もう二度と戻らない、眩しい時間。


苦しかったことも美しいものに変えてしまう卒業式は、魔女のようだ。


「以上で校長先生の話を終わります。礼」


校長先生の話も、長いようで短かった。


今となってはもう少し聴いていたい。


このあと、卒業証書をもらったら私は本当に卒業する。


それは、彗の生きることのない時間を生きることでもある。


どんどん名前が呼ばれていく。


涙声、大きな声、細い声、ひょうきんな声。


何人も受け取っていく。


「月岡 侑里」


「はい」


壇上に上がって賞状を受け取り、一礼する。


顔を上げると、校長先生が笑っていた。


初めて校長先生の顔をまともに見て、少し戸惑った。


すぐに後ろに向き直ってパイプイスに座る。


戻る時、私は驚いていた。


お母さんが来ていたから。


それも、今まで見たこともないような上等な着物を着て。


涙も見えた。


< 140 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop