雪の光
もう二度と戻らない、眩しい時間。
苦しかったことも美しいものに変えてしまう卒業式は、魔女のようだ。
「以上で校長先生の話を終わります。礼」
校長先生の話も、長いようで短かった。
今となってはもう少し聴いていたい。
このあと、卒業証書をもらったら私は本当に卒業する。
それは、彗の生きることのない時間を生きることでもある。
どんどん名前が呼ばれていく。
涙声、大きな声、細い声、ひょうきんな声。
何人も受け取っていく。
「月岡 侑里」
「はい」
壇上に上がって賞状を受け取り、一礼する。
顔を上げると、校長先生が笑っていた。
初めて校長先生の顔をまともに見て、少し戸惑った。
すぐに後ろに向き直ってパイプイスに座る。
戻る時、私は驚いていた。
お母さんが来ていたから。
それも、今まで見たこともないような上等な着物を着て。
涙も見えた。