雪の光
少し褒めてあげるとすぐに嬉しそうになる。
「……あの」
今しかないと思った。
これを逃したら、この先ずっと謝る機会はない気がした。
「んー何?」
「昨日は、ごめんね」
振り返らずに、一言だけ漏らした。
「……ああ、大丈夫だよ」
心なしか、千夏の声がいつもより硬い気がする。
まるで、金属を弾いたような。
不安になって、もう一度謝る。
衝動に駆られて手首を切りつけたくなる。
ぐっと手首を抑えて我慢する。
「あの、本当にごめんね。
あんなにひどい態度取って」
「大丈夫だよ、本当に。
気にしないで」
廊下に出ていく。
それで私はやっと安心した。
でも。
……安心してはいけなかったのだ。
その時の私は、まだこれがどんな大事に発展するか分かっていなかったのだ。
呑気に古典の予習課題なんて進めている場合じゃなかったのだ。