セレブ結婚の甘い落とし穴【完】
「わかったなら、早くサインして」
里穂は荒々しく私に詰め寄る。

「わかった。サインはする。でも、私は言ってない。これだけは信じて」


「ふん、もういいから、サインしなさいよ」


私は、里穂には突き出されたボールペンを手に取り、ゆっくり空欄を埋めていった。


私の幸せはこの紙切れ1枚で一瞬にして終わる。
悪夢を見ている。
そう信じたかった。
私は夫をなくし、親友をなくした。


里穂は[離婚届]を受け取ると、途端に晴れやかな表情となり、嬉しそうに帰って行った。


私は、空っぽになった。



< 122 / 152 >

この作品をシェア

pagetop