月は紅、空は紫
しかし、事件の捜査ともなれば清空には専門外である。
中村は知らぬだろうが、清空とて陰陽師として妖が起こす事件の捜査を月の紅い夜に行ってはいる――が、それは人間相手ともなれば全くもって勝手の違う行動となる。
そんな清空に、中村は事件の捜査を手伝って欲しいと願っている……中村の意図が清空にはまるで掴めずにいた。
江戸時代は、奉行所や御役所が警察署、裁判所、検察庁の役割を一手に担っていた。
そして、そこに働く役人といえば武家社会でもあり全て武士であったのだが――実は全員が武士というわけではない。
中村の部下として働いている、いわゆる『岡っ引き』どもは武家の人間だっているが、普通の町民とて存在するのである。
中村は岡っ引きに給料を払い雇っていたのだが、そもそも岡っ引きとは軽犯罪を許され手先として利用されたのが起源なのである。
武士が市中の犯罪者については不明分なために、情報収集の為に軽犯罪をしてしまった者の罪を許す代わりに自らの手先として利用する、そのような幕府からは本来なら禁止されていた『非公認な身分』の者たちである。
中村はそのような軽犯罪を許した者を使用することを嫌い、自らで雇い入れた岡っ引き達を助手として使用していたのだが、今回の事件に限っては岡っ引きだけでは埒が明かぬということで――清空に事件の捜査を手伝って欲しいと願い出たわけである。
中村は知らぬだろうが、清空とて陰陽師として妖が起こす事件の捜査を月の紅い夜に行ってはいる――が、それは人間相手ともなれば全くもって勝手の違う行動となる。
そんな清空に、中村は事件の捜査を手伝って欲しいと願っている……中村の意図が清空にはまるで掴めずにいた。
江戸時代は、奉行所や御役所が警察署、裁判所、検察庁の役割を一手に担っていた。
そして、そこに働く役人といえば武家社会でもあり全て武士であったのだが――実は全員が武士というわけではない。
中村の部下として働いている、いわゆる『岡っ引き』どもは武家の人間だっているが、普通の町民とて存在するのである。
中村は岡っ引きに給料を払い雇っていたのだが、そもそも岡っ引きとは軽犯罪を許され手先として利用されたのが起源なのである。
武士が市中の犯罪者については不明分なために、情報収集の為に軽犯罪をしてしまった者の罪を許す代わりに自らの手先として利用する、そのような幕府からは本来なら禁止されていた『非公認な身分』の者たちである。
中村はそのような軽犯罪を許した者を使用することを嫌い、自らで雇い入れた岡っ引き達を助手として使用していたのだが、今回の事件に限っては岡っ引きだけでは埒が明かぬということで――清空に事件の捜査を手伝って欲しいと願い出たわけである。