月は紅、空は紫
というのが、清空の家にやって来た少女――但馬屋の娘である小夏が語った始終である。
小森からの頼みによって、急ぎで清空を呼びに来たのだが、どれほど起こそうとしても清空は起きない。
よって、最終手段として清空の身体に飛び乗ることによって起こそうとしたのだ――と、小夏は笑顔で清空に語った。
桂川に、正体不明の死体が上がり、その死因なりを検分して欲しい、ということなのだそうだ。
清空にとって、中村は決して親しいとは呼べないが、それでも知らない仲という訳でもない。
辻斬りに遭った死体を検分して、斬り口から犯人を捜す事に協力したこともあるし、中村自身が清空の患者として診療所を訪ねてきたこともある。
「――で、中村さんは僕に来いって?」
表に出る準備を整えながら、清空は確認するように小夏に訪ねる。
診療所の薬が置いてある棚を興味深そうに眺める少女の答えは聞くまでもなく、清空は(急がないと、また中村さんは煩いからな――)、と考えながら準備をゆっくりと整えるのだった――。
小森からの頼みによって、急ぎで清空を呼びに来たのだが、どれほど起こそうとしても清空は起きない。
よって、最終手段として清空の身体に飛び乗ることによって起こそうとしたのだ――と、小夏は笑顔で清空に語った。
桂川に、正体不明の死体が上がり、その死因なりを検分して欲しい、ということなのだそうだ。
清空にとって、中村は決して親しいとは呼べないが、それでも知らない仲という訳でもない。
辻斬りに遭った死体を検分して、斬り口から犯人を捜す事に協力したこともあるし、中村自身が清空の患者として診療所を訪ねてきたこともある。
「――で、中村さんは僕に来いって?」
表に出る準備を整えながら、清空は確認するように小夏に訪ねる。
診療所の薬が置いてある棚を興味深そうに眺める少女の答えは聞くまでもなく、清空は(急がないと、また中村さんは煩いからな――)、と考えながら準備をゆっくりと整えるのだった――。