月は紅、空は紫
道元がやこと初めて会ったのは、半月ほど前のことである。
道元が営む薬問屋、『だるま薬屋』にやこが連れて来られたのは日が昇って間もない時間、道元の妻である染乃が朝飯の仕度をしているときであった。
やこを『だるま薬屋』に連れて来たのは、二条のほど近くで川漁師をしている金造という男である。
金造は『だるま薬屋』を利用している客であり、道元とも顔見知りである。
そもそも、道元が診療所をしていた頃から金造は道元の患者であり、道元が医者を廃業した後も軽い怪我や病気なら『だるま薬屋』に薬を買い求めに来ていた。
その金造が、朝一から川で漁をしていると、川辺に一人の美女を見かけた。
まだ日も昇っていないような時間で、白地に風車の柄が描かれた着物を着て、両腕には壷を抱えている。
船の上からその姿を見掛けて、金造は『天女さまでも迷って出てきたのかね?』という感想を抱いた。
美女は、金造が眺めている間にも川下の方向に歩いて行き、金造はしばしの間仕事に精を出していた。
その日は思わぬ豊漁で、仕事である漁は夜明けの直前まで続いた。
釣果に満足しながらも、船を漕いで自宅のある五条の川縁に戻り、船を繋ごうとした時である。
先ほど、釣りをしていた上流で見かけた美女が桂川の土手を歩いていたのである。
道元が営む薬問屋、『だるま薬屋』にやこが連れて来られたのは日が昇って間もない時間、道元の妻である染乃が朝飯の仕度をしているときであった。
やこを『だるま薬屋』に連れて来たのは、二条のほど近くで川漁師をしている金造という男である。
金造は『だるま薬屋』を利用している客であり、道元とも顔見知りである。
そもそも、道元が診療所をしていた頃から金造は道元の患者であり、道元が医者を廃業した後も軽い怪我や病気なら『だるま薬屋』に薬を買い求めに来ていた。
その金造が、朝一から川で漁をしていると、川辺に一人の美女を見かけた。
まだ日も昇っていないような時間で、白地に風車の柄が描かれた着物を着て、両腕には壷を抱えている。
船の上からその姿を見掛けて、金造は『天女さまでも迷って出てきたのかね?』という感想を抱いた。
美女は、金造が眺めている間にも川下の方向に歩いて行き、金造はしばしの間仕事に精を出していた。
その日は思わぬ豊漁で、仕事である漁は夜明けの直前まで続いた。
釣果に満足しながらも、船を漕いで自宅のある五条の川縁に戻り、船を繋ごうとした時である。
先ほど、釣りをしていた上流で見かけた美女が桂川の土手を歩いていたのである。