水月夜
他に誰がいるというのだろう。


って、あれ? ちょっと待って。


今、ニュースでは『ふたつの遺体が夫婦である可能性が高い』って言ってたよね。


本当にそうだとしたら、千尋はどうなったのか。


自分の家が夜明け前に焼けたとき、千尋はどこにいたんだろう。


いやいや、こんなこと考えてる場合じゃない。


首を左右に振ってテレビを消す。


慌てて惣菜パンをすべて口の中に入れ、家の鍵を持って家を出た。


ローファーを急いではいたせいで歩き方がぎこちなくなるけど、全力で気づかないフリをする。


ぎこちない歩き方のまま学校に向かっていると、うしろから私を呼ぶ声が聞こえた。


「柏木ちゃん、おはよう」


私の名前を呼ぶ、聞き覚えのある声。


くるっと振り向き、声の主の姿を見てやっぱり、と思った。


声をかけてきたのは緒方先輩だった。


「おはようございます、緒方先輩」


立ち止まってニコッと挨拶したが、私の隣にやってきた先輩の表情は暗かった。
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