水月夜
どうしたんだろう。


前に声をかけたときは笑顔を見せていたのに、嫌な出来事でもあったのかな。


笑顔を消して首をかしげる。


「先輩、どうしたんですか?」


顔を覗き込んでみるが、先輩は私の顔をチラッと見ようともしない。


頬はげっそりしているし、目の下には濃いクマがあるから今にも倒れそうだ。


頭上に疑問符を浮かべて先輩の隣を歩く私だが、先輩のあまりにやつれた顔につい立ち止まってしまう。


私が立ち止まって数秒たったあと、緒方先輩はようやく私が止まったことに気づいた。


そして、やつれた顔を隠すように笑顔を見せる。


「ごめん、柏木ちゃん。なんだか今日はボーッとしちゃうんだ」


ボーッとしているだけではないと思う。


笑顔でごまかそうとしたってムダだよ、先輩。


嘘をついたら自分が苦しくなるだけ。


それをわからせるために、真剣な表情を先輩に見せた。


「先輩、本当はなにかあったんですよね? 我慢しないでしゃべったほうがいいですよ」
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