水月夜
「えっ……⁉︎」


なぜ私が驚きの声をあげたのか。


それはテレビ画面に映った場所が、私の家の近くだったから。


しかも、映っているのは千尋の家。


どくん、と心臓が嫌な音を奏でる。


映像がしばらく流れたあと、画面に見覚えのあるふたつの名前が表示された。


そのふたつの名前は、千尋の両親の名前だった。


わけがわからずにまばたきする私をスルーして、アナウンサーの声が流れてきた。


『今日未明、江並(えなみ)町の猪狩さん宅で火事があり、火は2時間後に消し止められましたが、2階建ての住宅が全焼しました』


「……っ」


『さらに、焼け跡からふたつの遺体が発見されました。この家に住む猪狩さん夫婦と連絡が取れなくなっているということで、警察は遺体が猪狩さん夫婦の可能性が高いとみて、出火原因を調べています』


そんな……。


江並町といえば、私が住んでいる町だ。


江並に住んでいる人で“猪狩”という名字は千尋とその両親しかいない。
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