水月夜
責任を持とうとせずにヘラヘラした顔で言葉を返してくる直美に、雨宮くんがギリギリと直美の手首を掴む手の力を強くした。


それでも直美は痛がろうとしない。


「痛いってば。離してって言ってるのになんで離してくれないの? そういう行動こそ傷つけてるんじゃないの?」


この状況が続けば直美の勝利に終わる。


雨宮くんが歯を食いしばって悔しそうな顔をした直後、直美から距離をとっていたヒロエと紀子が直美の背後に忍び寄った。


そして、雨宮くんの手から無理やり直美の手首を離し、直美の腕を拘束する。


予想外の展開に直美の表情が変わった。


「は⁉︎ ちょっと……ヒロエに紀子、なにすんのよ! 痛い! 離してよ!」


自分の腕を掴んだ相手が雨宮くんならさほど驚かないが、その相手がヒロエと紀子となると、さすがの直美でも驚くようだ。


昨日まで同じグループのメンバーだったから、驚かないわけがない。


表情を変えた直美に、私とヒロエと紀子以外のクラスメイト全員が目を丸くした。
< 206 / 425 >

この作品をシェア

pagetop