ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
お父さんの携帯だ。
わずかにこもっている音を辿ると、サイドテーブルの上に畳んで置かれた服の中から聞こえる。私は父がいつもパンツのポケットに携帯を入れていたのを思い返し、取り出した。
折り畳み式の携帯の画面に表示されていたのは、登録されていない番号。
仕事関係の人かもしれないし、お父さんはしばらくはこんな状態だから、出た方がいいよね。
悩みつつも、私は通話ボタンを押した。
「もしもし、相原悟の携帯です」
『もしもし、こちら【株式会社ワンキャッシング】の井原ですが、相原さんは……』
電話の相手は、男性だった。
株式会社ワンキャッシング? 聞いたことがない取引先だ。それに、キャッシングって……。
心がざわざわと波立つ。
「私は相原の娘です。父は昨晩心臓発作で倒れまして、現在入院しております。あの、失礼ですがどのようなご用件でしょうか?」
『これはこれは。相原さんのお嬢さんでしたか』
男性の声がワントーン高くなった。突如不気味なほど丁寧になる口調に、妙に不安が掻き立てられる。漠然と、これからさらに悪いことが起こるような気がした。
わずかにこもっている音を辿ると、サイドテーブルの上に畳んで置かれた服の中から聞こえる。私は父がいつもパンツのポケットに携帯を入れていたのを思い返し、取り出した。
折り畳み式の携帯の画面に表示されていたのは、登録されていない番号。
仕事関係の人かもしれないし、お父さんはしばらくはこんな状態だから、出た方がいいよね。
悩みつつも、私は通話ボタンを押した。
「もしもし、相原悟の携帯です」
『もしもし、こちら【株式会社ワンキャッシング】の井原ですが、相原さんは……』
電話の相手は、男性だった。
株式会社ワンキャッシング? 聞いたことがない取引先だ。それに、キャッシングって……。
心がざわざわと波立つ。
「私は相原の娘です。父は昨晩心臓発作で倒れまして、現在入院しております。あの、失礼ですがどのようなご用件でしょうか?」
『これはこれは。相原さんのお嬢さんでしたか』
男性の声がワントーン高くなった。突如不気味なほど丁寧になる口調に、妙に不安が掻き立てられる。漠然と、これからさらに悪いことが起こるような気がした。