ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「……んっ……」

 そのまま颯馬さんの腕に抱き抱えられながら、ゆっくりとソファーに押し倒される。私の上に覆いかぶさる彼は、一度離れて私の顔を覗き込んだ。

「小春」

 どこか余裕のない妖艶な表情に、ひと際鼓動が大きくなる。わずかに濡れる唇がぞくっとするほど色気に満ちていて、私は気恥ずかしさに両腕を目の上で組んだ。それでも、

「もっと君が欲しい」

 私の手首を掴んだ彼が、再び唇を押し付ける。私は求められるままに応えたくて、颯馬さんの首に腕を回した。

 心が満ち足りるような感覚に目頭が熱くなる。

 好きだ。この人のことが、どうしようもなく。たとえ颯馬さんにとってこれがただの気まぐれだったとしてもかまわない。

 今だけは、颯馬さんが私を見ている。この瞬間が、少しでも長く続けばいいのに。
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