ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「君は?」
ひとりの世界に入り込んでいた私に、颯馬さんが問い掛ける。
私は、「えっ?」と固まった。すると、彼はさらに「名前。なんていうんだ?」と質問を重ねる。
「あ、小春です。相原……小春」
「小春、か」
颯馬さんは、ぽつりとつぶやく。思わずドキッとした。男性に下の名前で呼ばれたことなどほとんどない私は、気恥ずかしくてなんとなく決まりの悪いような心持ちになる。
なんともおかしな関係だろう。お互い名前も知らなかったのに、先に婚約したなんて。知る必要がないから。そう言うととても冷たい結びつきに思えるが、適度な距離を取り、干渉しない。きっと、それが私の求められていること。これから私が一生をかけてやっていかなければならない仕事だ。
どこまで係わっていいのか、その都度慎重に見極めていかないと……。
「そうだ。これ」
颯馬さんは、テーブルの上にあった封筒を手に取ると、その中身だけを私に差し出した。受け取り、広げる。
あっ……。
持っていた手に自然と力が入る。手渡されたのは、白に茶色の文字で【婚姻届】と書かれた紙だった。
ひとりの世界に入り込んでいた私に、颯馬さんが問い掛ける。
私は、「えっ?」と固まった。すると、彼はさらに「名前。なんていうんだ?」と質問を重ねる。
「あ、小春です。相原……小春」
「小春、か」
颯馬さんは、ぽつりとつぶやく。思わずドキッとした。男性に下の名前で呼ばれたことなどほとんどない私は、気恥ずかしくてなんとなく決まりの悪いような心持ちになる。
なんともおかしな関係だろう。お互い名前も知らなかったのに、先に婚約したなんて。知る必要がないから。そう言うととても冷たい結びつきに思えるが、適度な距離を取り、干渉しない。きっと、それが私の求められていること。これから私が一生をかけてやっていかなければならない仕事だ。
どこまで係わっていいのか、その都度慎重に見極めていかないと……。
「そうだ。これ」
颯馬さんは、テーブルの上にあった封筒を手に取ると、その中身だけを私に差し出した。受け取り、広げる。
あっ……。
持っていた手に自然と力が入る。手渡されたのは、白に茶色の文字で【婚姻届】と書かれた紙だった。