ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「なんでもいい」

 そう言われ、私は「じゃあ、ひとつだけ……」と口を開く。

「結婚したい訳ってなんですか?」

 はじめて会った夜、颯馬さんは訳があって結婚したいと言っていた。だが、親が選んだ相手とか、煩わしいのが嫌だとか、その口ぶりは納得のいかない結婚をする前提だった。

 普通なら、恋愛をして自分たちのタイミングですればいい。偽装結婚なんて選択はまずしないだろう。

 なにか、すぐに相手を見つける必要があったように思えた。なぜそこまで迫られているのか、その理由はなんなのか、気になっていたのだ。

 返答を待つ。颯馬さんは、ゆっくりと長い息を吐いた。

「君も知っていると思うが、俺は将来あの会社を継がなければならない。幼い頃から、そのために必要な教育は山ほど受けてきた。ただ……」

「あ、言いづらいことなら――」

 言い淀む颯馬さんに慌てて告げる。しかし、彼は「そんなんじゃないから大丈夫」と苦笑した。
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