ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「父は昔から家庭を重んじる人で、トップに立つにはそばで支えてくれる存在が不可欠。愛を知り、愛されることを知らない経営者が会社やたくさんの社員の人生を背負うことなどできないと聞かなくて。三十までに結婚しないと、父が決めた相手とお見合いさせられることになったんだ」

 お見合い……。親の決めた相手というのは、そのことか。

「それは御免だからな」

 颯馬さんは冷ややかに言う。

 ほとんど面識のない私と結婚するのも、あまり変わらないような気がするけれど。親と面識のある相手だと、仮面夫婦に……なんていうふうにもいかないだろうし、その分まだ知らない相手の方がマシだということか。

 お見合いなんて私には縁遠い話だからよくわからないけれど、両親同士で深い交流があるとなると、なんとなく気は休まらないと思う人もいるかもしれない。

 考えをめぐらせていると、

「そうだ」

 とつぶやく颯馬さんは、スーツの胸ポケットから取り出した茶封筒を「はい」と私に手渡す。

 茶封筒はズシッと重く、分厚い。

 なにこれ? また書類かな。

 不思議に思い、きょとんとした表情で颯馬さんを見つめた。
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