ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「お先にいただきました」
お風呂から上がりリビングに戻った私は、ソファーに颯馬さんの姿があるのを認めて声を掛けた。
「おかえり」
顔だけをこちらに向けた彼は、わずかに微笑む。しかし、それはすぐに再び手もとの方へ戻っていった。
ゆっくりと近づくと、颯馬さんはテーブルの上でノートパソコンを触っていた。キーボードをタッチする手は忙しなく動いている。
仕事だろうか? 邪魔しないようにしないと。そう思い、私はできるだけ足音を忍ばせて自室へ向かった。
「あ、小春。ちょっと待って」
だが、それに気づいた颯馬さんに呼び止められる。おもむろに振り返ると、彼はパソコンを閉じてこちらを見つめていた。
「おいで」
手招きされて、私は驚きのあまり大きく目を見張る。突っ立って動かない私に、颯馬さんは「ここ」と空いている自身の隣を叩いた。当惑しつつも、おずおずと歩み寄る。
目の前まで来ると、颯馬さんに手を引かれて私は勢い良くソファーに腰を落とした。