ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「ごめんなさい……」

 ぽつりとつぶやく。

 颯馬さんが与えてくれているのだから、私が役目を果たすのもあたり前なのに。謝らせて、こうして心配までかけて、なにをやっているんだろう……。しっかりしないと。

「颯馬さん、もう大丈夫です。ありがとうございました」

 そっと颯馬さんの胸もとを押し返そうとするけれど、動かない。

「颯馬さん?」

 恐る恐る声を掛ける。つかの間の沈黙のあと、彼はゆっくりと身体を離して小さく息を吐いた。そして、

「……俺も、少し疲れた」

 そう告げた颯馬さんが、私のひざにごろんと頭を乗せて上向きにソファーに寝転がる。

 ――えっ?

 驚愕のあまり瞠目した私は硬直した。颯馬さんは腕を組み、目を閉じている。

 まさか、ここで眠るつもり?

 心臓が大きく波打った。自分が今までどこに手を置いていたのかすらわからなくなり、不自然に辺りを見渡す。

「あんなに上機嫌な父は久しぶりに見た」

 颯馬さんは目を開けないままで話を始めた。
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