ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
食器を洗い終え、水を止めてタオルで手を拭う。すると、小さな唸り声のようなものが耳に届いた。嫌な予感がして、カウンターから身を乗り出して父の方を覗く。
視界に飛び込んできた光景に、心臓がドクンと音を立てた。
「……お、お父さん!!」
大急ぎで父に駆け寄る。
「お父さんどうしたの!? 胸が痛い!? 苦しい!?」
父は額に血管が浮かぶほど力いっぱい胸を押さえながら、床に座り込んでいた。
呼吸が荒く、冷や汗もひどい……。もしかして、息ができていないの?
「きゅ、救急車……!」
慌ててそばにあったバッグの持ち手を引っ張った。バッグが床に落ちた衝撃で、中身が一斉に散らばる。その中からスマートフォンを手に取った私は、画面をタップしてキーパッドを表示させた。
「救急車って……」
父の苦しそうな声に焦燥感が高まり、信じられないほどに指が震えていた。意識して冷静にならなければ、救急車の番号ですらわからなくなる。
「救急車をお願いします! 父が、心臓の悪い父が倒れました! 呼吸が苦しそうで、胸も痛いみたいなんです。お願いです。早く来てください!」
電話に出た救急指令センターの担当者に父の症状や住所を告げて、到着を待つ。
「お父さん、すぐに来てくれるからね。もう少しだけ頑張って」
私は声を掛け、苦痛からもがき苦しむその背中をさすることしかできない。
誰か、お父さんを助けて……。
心の中で恐怖が膨れ上がる。
たった数分の時間が、果てしなく長く感じた。
視界に飛び込んできた光景に、心臓がドクンと音を立てた。
「……お、お父さん!!」
大急ぎで父に駆け寄る。
「お父さんどうしたの!? 胸が痛い!? 苦しい!?」
父は額に血管が浮かぶほど力いっぱい胸を押さえながら、床に座り込んでいた。
呼吸が荒く、冷や汗もひどい……。もしかして、息ができていないの?
「きゅ、救急車……!」
慌ててそばにあったバッグの持ち手を引っ張った。バッグが床に落ちた衝撃で、中身が一斉に散らばる。その中からスマートフォンを手に取った私は、画面をタップしてキーパッドを表示させた。
「救急車って……」
父の苦しそうな声に焦燥感が高まり、信じられないほどに指が震えていた。意識して冷静にならなければ、救急車の番号ですらわからなくなる。
「救急車をお願いします! 父が、心臓の悪い父が倒れました! 呼吸が苦しそうで、胸も痛いみたいなんです。お願いです。早く来てください!」
電話に出た救急指令センターの担当者に父の症状や住所を告げて、到着を待つ。
「お父さん、すぐに来てくれるからね。もう少しだけ頑張って」
私は声を掛け、苦痛からもがき苦しむその背中をさすることしかできない。
誰か、お父さんを助けて……。
心の中で恐怖が膨れ上がる。
たった数分の時間が、果てしなく長く感じた。