蛍火
「ねぇゆう、君は私に何も聞かなかったね」
ましろがぽつりと呟いた。何が、と聞くと、そのままだよ、と彼女は静かに答えた。
「君は高校生でしょ。18、だっけ」
「あーうん、そうだな」
村で唯一の駅から電車で1時間の場所にある高校に優夜は通っていた。今は夏休みだから電車には買い物の時以外乗っていないけれど。
本来、中学校を卒業してすぐに高校に入学していれば今年度で卒業できていたのだが、この村に越してくること自体が急な出来事で、行くはずだった高校をキャンセルして一年無駄にした為優夜はまだ高校2年生だ。
あの両親は確かに一緒にいて楽しい。が、かなりの自由奔放さがあり、たまに振り回されるので困ったものだ。
まぁ、振り回されるのが嫌なわけではないのだけれど。
自由奔放なくせに、どこか人に愛される。そんな両親だからこそ、憎めないのだ。