蛍火
「私の歳も、どうして家に一人でいるのかも、他にも色々、気にならなかったの?」
「……」
確かに気にならなかったわけじゃない。どうして、と聞くのは簡単だった。
優夜が知っているのは、確かに彼女の名前や性格だけだった。誕生日も、血液型も、歳も、何も知らないのだ。
尋ねる家にはいつも彼女1人だけがいた。両親はどうしたのか、と考えたことなど何度もある。
それでも、それでも優夜は、
「…だってお前、聞かれたくないって顔してたし。誰にだって知られたくないこととか聞かれたくないことって、あるじゃねえか」
根掘り葉掘り聞くことが全てではないと知っているから。
自分の両親のことでさえ知らないことなんてたくさんあるし、両親が知らない自分のことだってもちろんあるだろう。彼女だってまたしかり。
人とはそういうものなのだ。
それを優夜は小さな頃からなんとなく分かっていたから、ましろのこともそうしたのだ。優夜は、昔から人に関する『そういうこと』に理解があり、また、聡い子供として育ってきた。
彼の周りに人が集まるのは、何かを察していても知らないふりをしてくれる優しさがあるからだ。それに優夜が気づくことはないけれど。