蛍火
そんなわけないだろ、と優夜は思わず口にしていた。
「え…」
「なんだそいつら、ふざけてんのか?お前が悪魔の子?そんなわけねぇじゃねえか。俺はそんなの認めねぇ」
お前みたいな抜けてるやつが悪魔の子であってたまるか、と付け足すと、余計なお世話だよ、とましろがむっとした。
いやだって、ふすまの段差でつまずく悪魔がいるか?と聞くと、ましろはぐっと押し黙った。それに軽く笑ってやってから、優夜はぼそりと言ってやるのだ。
「…まぁ、お前が悪魔の子だとしても、お前がましろなら俺はそれでいいよ」
「えーなにそれ、意味分かんない」
「そのまんまだよばーか。分かんねぇうちはそれでもいい。でも、もしかしたらいつかこの意味を理解できる日がくるかもしれねぇよ」
「ゆうはたまに難しいことを言うね。中卒が理解できることなんて限られてるのに」
「授業でなんて習わねぇよこれは。先生がこんなこと律儀に教えたりするもんか。頭じゃなく自ずと心で理解するもんだぜ」
とん、と、優夜の指がましろの胸と胸のあいだを優しく押した。ましろは首を傾げていたが、優夜はそれが可笑しくて笑う。
彼女は、首を傾げながらもそれをどこか嬉しそうに見ていた。