蛍火
──そうして2週間が過ぎた。夏休みは、あと1週間もない。
そんな時だった。
「…最近、上手く寝られないんだ」
「ましろ?」
「なんでだろうね」
ましろはくるくるとコップを振りながら呟いた。からん、からん、と。入れた氷が風鈴の音に似ているようでふと顔を上げてみる。
そういえばましろの家には風鈴は吊していないんだな、と思った。風鈴は、からんからんだなんて鳴らないというのに、何を考えてるんだろう。
前まではましろが夜に手入れしていた庭も、ここ2、3日の間に優夜が手入れするようになった。ちょっと疲れちゃったと言うましろに対し、優夜がじゃあ俺がやるからと雑草取りや水やりを請け負うようになった。
あぁ、なんだか寂しい。
彼女が…、ましろが、まるで弱ってきてるみたいで。発作の頻度について尋ねる度に、優夜が知らなかっただけでこれが普通なんだよ、とましろはいつもそう答えて笑うけれど。