蛍火
さわ、と草が揺れる。今し方あげた水が草の葉を伝ってぽとりと落ちる。
きら、と。それが太陽の光を反射して輝くのを見るのは嫌いじゃないとつい一昨日に知ったので。だから、優夜は今日も水やりをする。

だけれど、本当は。

彼女が大事にしていた庭が見捨てられてしまったようで、なんとなく胸が痛くなったからなのだけれど。

「胸が苦しくなくても、前より息苦しい気がするの」

最近隈がないか、と。いつもより悪く見える顔色に問うた優夜への答えがそれだった。
そんな発言をされたらこっちだって焦る。大丈夫かよ、と聞くと調子が悪いだけだよ、とましろは力無く笑った。
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