蛍火
両者譲らぬ攻防戦。
とはいえ、両手のましろに対し優夜は片手でのやりとりなのでどちらが勝者となるのかは目に見えているのだが、優夜はそれをしない。
力ずくではなく、あくまでましろから食べなければ意味がないと思っているからだ。それならばそうめんのことをましろに話せば多少は会話の方向性が変わるだろうというのに、すっかりそんなことなどすっかり頭から抜け落ちた。

あるのは、おじさんと言われたことのショックと、この子供をなんとしてでも引きずり出して説教してやろうという思いだけである。
この子供も自分もどこか意地っ張りなところがあるという自覚はあるものの、一歩も譲らぬ戦いに躍起になって互いに睨み合う。








結局、家に何もないからというましろにやっと思い出した優夜がそうめんのことを持ち出すまで、戸は悲鳴を上げ続けていた。

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