今でもおまえが怖いんだ
コレお土産です。
そう手渡されたのは岩手のお土産「かもめの玉子」だ。
愛知県で言うところのなごやんだし、九州でいうところの母恵夢。

ありがとうと受け取って、「平泉は行った？」と訊ねる。

「いや、俺は行ってないよ」と宗徳さんは首を振った。

「折角だし銀河鉄道めぐったり、小岩井牧場行ったり、あと河童伝説のところ行ったり。勝手に東北うろついてきた。ああ、あと恐山ね」

結構な移動距離じゃないですかと言うと、「免許ないから地獄だよ」と彼は頷いた。

「お仕事は休んだの？」
「そうそう、有給。一応職場の人たちも知っているしね。そういうことには口出されねえのまったく」

旅の思い出話に花を咲かせるようなことはなかった。

旅行中、彼はフェリーから見える海の写真とか宿泊した施設から見える夜景の写真を送ってきてくれていたし、今どの辺にいるかってグーグルマップのスクリーンショットをこまめに送ってくれた。
ツイッターのようにリアルタイムで情報を発信されていたから私も旅に同行しているような気持ちになってしまっていた。
それと同時に、宗徳さんは余程退屈な時間を過ごしているのだろうと思った。
< 29 / 78 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop