今でもおまえが怖いんだ
さっきは嫌だよと言ったクセに、彼はシューズラックからシュプリームのサンダルを取り出して玄関に並べてみる。

「あれ、元カレのサイズっていくつだったっけ」
そう聞かれ、28と答えると「大は小を兼ねるもんな」と彼は他の靴たちも振り返った。

「いくつなんですか」
アディダスネオに手を伸ばす彼に聞き返すと、「7.5だね」と返される。

「背はいくつだったの」
「178」
「俺より高いじゃん、クッソ。顔は?」
顔はねぇ……なんてそんなことを言いながら、私たちはアパートの外へと出た。

私は大きなリゲッタを、彼は結局自分のナイキを履いていた。
階段を下りながら、似ている俳優の名前を次々と出していってみる。
それって俗に言うイケメンじゃんと言われて、そうだよと少し大きな声で言ってしまった。

だってそうじゃなかったら嫌だよ私、あの人。

ラーメン屋への道のりを歩きながら、私は少しずつ話しだしていた。
私が利久さんと付き合うよりもずっと前のこと。

宗徳さんはずっと隣りでニヤニヤしていたけれど、やがて「うん、うん」と小さく相槌を打ってくれて、それから両の手をパーカーのポケットへと入れた。


君の頭を撫でてやれたらどんなに良かっただろうって思ったのは今日が初めてじゃないんだよ。

そっぽを向いたままで言われる。

うん、うん……と私も繰り返しながら、彼と少しだけ距離を開けて歩いている。

ありがとうね、と言う時胸がいっぱいになっていた。

私も彼と同じようにパーカーのポケットに両手を入れた。

震える指先を隠していたかった。
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