今でもおまえが怖いんだ
ep.05
骨ばった背中に両手を回して大袈裟に浮き出た背骨を指で探った。

彼の首から下がったシルバーのネックレスが頬に軽く当たった。
「あ、ごめん」と気付いて言う声は広い部屋に静かに響いた。

ううん、と返す声が震えて、恥ずかしさに薄っすらと目を開いた。

大丈夫? と顔を覗き込まれて慌てて両腕で顔を隠す。

「あ、ごめん」ともう1度先程と同じ言葉を繰り返してから、彼はゆっくりと腰を動かす。
彼の皮に付けられているピアスが中で動くから結構な異物感がある。

これってゴム破けないの? と初めて見た時に思わず聞いてしまった。
彼はリングに指を通して軽く引っ張るフリをしながら「わかんね、でも生よりは良いんじゃね?」と軽い調子で笑った。

こちらは少し不安を感じたけれど、それでも彼にとっては大袈裟に怖がるほどのことでもないのだろう。彼が気にしないことを私が気にして雰囲気を壊してもいけないため、「うん、そうだね」。そう答えた。

中出しをされたことはまだ1度もない。生は絶対にあり得ないし、中出しもその次くらいには
ないんだと言って、「だって俺、責任取りきれねえし」と彼は続けた。
でも避妊に失敗したらアフターピル代くらいは出すからさ、と言うものだから「ノルレボって18000円するんだけれど」と言ったら「あ、やっぱり取り消し」と言ってヘラヘラと笑った。
若者の特権だと思う。

コレを妻帯者の客に言われたら間違いなくムッとしてしまうだろうし不安を感じてNGを出してしまうかもしれない。

けれど、有馬君だからなあという気持ちが少しばかりあった。
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