今でもおまえが怖いんだ
運転席の彼を横目で見ると、首や肘や頬、手の甲にまで貼られた絆創膏が気になった。
手首は包帯で固定されていて、なんだか少しだけ動かし辛そうだったけれど、それでも丁寧に運転をしてくれている。
気になっているのかむしろいつもよりずっと慎重なハンドルの切り方で、こちらが申し訳なくなってしまう。
「怪我、どうしたんですか」
赤信号で停車した時に訊ねてみた。
ヴァージニアを咥えて、なかなかつかないジッポをカチカチと鳴らしていた彼に、私は安物のライターを差し出す。
信号が青に変わるところだった。
慌てたように顔を寄せられたので、私も素早く手を添えながら彼の煙草に向けた。煙草の先にオレンジの火種が見えたことを確認して、私は手を引っ込める。
ゆっくりと発車させながら、標門さんは「別に」と静かな声で言った。
「酔っ払っていたんだよ」
ウインカーに合わせてハンドルを指先で叩いて、少し考え込むようにしながら彼はそう言った。何かを言おうとして口を薄く開きかけてまた閉じて。
言葉を何度か選んでいた。
手首は包帯で固定されていて、なんだか少しだけ動かし辛そうだったけれど、それでも丁寧に運転をしてくれている。
気になっているのかむしろいつもよりずっと慎重なハンドルの切り方で、こちらが申し訳なくなってしまう。
「怪我、どうしたんですか」
赤信号で停車した時に訊ねてみた。
ヴァージニアを咥えて、なかなかつかないジッポをカチカチと鳴らしていた彼に、私は安物のライターを差し出す。
信号が青に変わるところだった。
慌てたように顔を寄せられたので、私も素早く手を添えながら彼の煙草に向けた。煙草の先にオレンジの火種が見えたことを確認して、私は手を引っ込める。
ゆっくりと発車させながら、標門さんは「別に」と静かな声で言った。
「酔っ払っていたんだよ」
ウインカーに合わせてハンドルを指先で叩いて、少し考え込むようにしながら彼はそう言った。何かを言おうとして口を薄く開きかけてまた閉じて。
言葉を何度か選んでいた。