今でもおまえが怖いんだ
帰りの高速道路で、パジェロの助手席に座りながら自分の髪をつまんでみると、セブンスターの匂いが微かに香った。

あー、この匂い……。

「この匂いさあ」

そう口に出してみて、それから私は言葉を一瞬止めた。

「誰と同じなんだっけ」
続かなかった言葉の代わりにそう訊ねてみたら、運転席の樋口さんは「はあ?」と聞き返してきた。

助手席から彼の横顔を盗み見る。
左耳にはゴールドのピアスが1点だけ。
別に不機嫌ではないらしいのだけれど、眠い時とか本当に何か些細なきっかけですぐに眉間に皺が寄るものだから顔立ちはいつも険しい。
別に怖くはないのだけれど。

「とって」と言われ、私はドリンクホルダーにはまっていたリプトンのミルクティーを彼に差し出す。
それを受け取る左手にはグッチのリング。

――相変わらずいかついなあ、この人。

車内で流れ続けるRAD WIMPSが「いいんですか」に変わった。

いやいやいや、よくないでしょう。
そう内心ですかさず思う。

いくら私が根無し草だとしても、こればっかりはよくないでしょう。

あまりにも好みとかけ離れた典型的DQNはいくらなんでも本気で好きになったら良くないでしょう。
いいんですか? ってちょっと不安とか疑問を感じたらそれはもう良くないんだって。経験上。絶対に。
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