今でもおまえが怖いんだ
「俺じゃねえの」

先程の話題に戻った梓紗さんが言う。

ああ、この匂い? と聞き返すと「そーだよ」とまた苛立ったような口調で返ってくる。

「ううん、違くて。梓紗さん以外にもセッタ吸っている人いたなあと思って」

「そればっかりは知らねえよ。デリの客じゃねえの。それかヤリサーの上級生」

「私、そういうどうでも良い人の吸っている煙草とか一切気にしたことないんだよね」

そんなやり取りをしている間にパジェロは高速から降りて、彼の住む町へと入って行く。

「家戻る前にイオン寄っていい? 冬用のスリッパがねえんだわ」

うん、と私が頷くまでもなく車はイオンの駐車場へと入って行った。

駐車券をとるために窓を開ける時だけ車内の音楽を消す癖、結構好きだったりする。

そういうところだけじゃない。

文化系男子を好きな自分がこの人と一緒にいる理由って、結構いろいろあるんだと思う。

粗暴なのがデフォルトだけれど、声を荒げて怒ったり力技でキレて来たりはしないところとか。
私が好きなバンドとか映画とかそういうのはわりと覚えていてくれるところとか。
あと、私の身体をかなり労わってくれているところとか。
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