今でもおまえが怖いんだ
飲み会の帰りに呼びつけてきた有馬君は、謝りこそしなかったけれど、いつもよりずっと上機嫌に私の肩を抱いてくれた。

左腕で私の肩を抱き寄せて、右手で私の髪を乱暴に撫でながら、何の確認もなく流れるようにいつものホテルへと入って行った。

大学生の頃からそうだった。
若い同年代の男性と寝る時はシャワーなんて浴びなくても平気だった。
即尺なんてお店ではAFの次に高いオプションになるはずなのだけれど、お店じゃなければ少しも特別なことではない。
むしろ、これが当たり前。

汗とアンモニアの味が混ざり合って、それらが自身の唾液とも混ざり合って、だらって自分の膝小僧に零れ落ちていく。

それが私にとってやるということだった。
大前提として汚いもの、危ないもの、やってはいけないもの。

けれど、好きな人になら赦してもいいこと。
好きだからというたった1つの理由だけで行うことのできること。


フと顔を上げれば、有馬君と目が合う。

――あれ。でも私、この人のこと好きなんだっけ。

「何見てるんだよー」と軽く茶化すように彼が言った。

ベッドに浅く腰かけた彼は、片手で私の髪を撫でながらもう片手で私の空いた手を握ってくれた。

ギュッと力が入って彼の爪が手の甲に食い込んでくる。

少し痛かったけれど、嫌ではなかった。
嫌ではないってことは、好きなのかもしれない。
私も彼の手を強く握り返した。
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