今でもおまえが怖いんだ
ep.01
外観はただのボロアパートだし築年数が経過している以上隙間風やラップ音や害虫の出没は防ぎようがないけれど、それでも北欧風の内装にリノベーションされた部屋を私は気に入っている。

2階と3階のメゾネットタイプでバストイレ別。
部屋は狭いのだけれどその分エアコンが回り易いし手入れも簡単だ。2階にはバストイレとキッチンとダイニング。
それと狭いけれど物置程度になる洋室が1部屋。

3階には洋室が二部屋とベランダがある。
部屋が狭い分ベランダが少し広くて、そこに風呂場の椅子と灰皿を設置した。
ガーデニングをやろうと最初は考えていたけれど、町全体の日当たりが悪いので、植物が育つことなんてないことに気が付いた。

家賃は5万と少しだけ。
新卒の給料でも充分に借りれる程の値段だ。
名古屋市内で同じような部屋を探したらきっと10万は平気で越えるだろう。

元々引きこもり気質なので外が不便だろうがそう気にすることはない。
誰とも会いたくない日の方が多いので田舎にこしたこともない。
私にとって今の部屋は最高の住み家になりつつあった。

「ただいま」
と、大きめの声で言って部屋へ入るよう幼い頃からしつけられていた。

玄関で靴を脱いでいると、「おかえり」と声が返ってきた。
ダイニングの明かりがついていて、ソシャゲか何かの電子音が聞こえた。
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