明日キミに聴かせたい

ー白神さんはいつからコウの曲聴いてるの?


花瀬先輩が質問してきたのは、もうすぐ午前が終わろうとしている頃だった。

朝からだらだらと続く先輩とのコウに関するやりとりは、私にとって今まで誰とも出来なかった事だったせいか妄想とテンションが上がり、それに加えてコウの歌声がずっと私の耳から脳内へと繰り返しやってくる幸せにすっかり酔っていた。

だからなのか、気づいたら私は花瀬先輩に自分が今の状態になるまでの事を語っていた。


ー私が学校に行かなくなってしばらく経った頃にコウの歌声に出逢ったんです。
それからは大袈裟かもしれないけど、コウの歌声が毎日の支えなんです。

ーそっか。コウも喜んでるかもね。白神さんにそんな風に思ってもらえてさ。

ーえ、いやいや!!そんなこと……でもいつかコウに感謝の気持ちは伝えたいなって思います。


あの時、絶妙なタイミングで私はコウの歌声に出逢えて、一瞬で彼の虜になった。
彼の歌声は思い出してばかりの辛い毎日を忘れさせてくれた。
沢山の傷みを癒してくれた。

どんなに感謝しても足りないぐらいだっていつも思う。

だからそんなコウがアルバムを出すなら絶対なんとしても買うし、ライブがあるなら絶対なんとしても行きたいし、私にとってのコウの存在は誰かが聞いたら笑うかもしれないぐらい神様みたいな存在だ。

こんなこと誰にも言えないけど。と心の中で呟いた。




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