明日キミに聴かせたい
どんなに瞼を閉じてまた開いてを繰り返しても焼きついて消えない。
もがいたあの湖の臭いは蘇るし、あの大学生の「ごめんな」は今もあの声で思い出す。
お母さんの泣き声も、お父さんの手の優しさも、奈津が抱きしめてくれた温もりも、シンとした部屋の暗がりの中で出逢ったコウの歌声だってまだまだ鮮明に思い出す。
玄関のドアを開けて踏み出しても襲ってくる恐怖感は消えず、吐き気がやってくる。
これが、この日々がずっとずっと続く。
あの日からずっと続く。
ずっとずっとずっとずっと……あとどれぐらい?
ねぇ、こんな日々があとどれぐらい続くっていうの?
いつになったら終わるっていうの?
あとどれぐらい?
そんなことを考えた瞬間に突然襲ってきた今までにない恐怖に私は飲み込まれそうになった。
そんな時、アプリを通じて花瀬先輩から電話がかかってきた。
まさかの電話に戸惑いながら出てみると、花瀬先輩は「大丈夫?」と問いかけてきた。
その声は少しコウに似ていて温もりを感じ、私は少し泣いてしまった。