明日キミに聴かせたい
「羽流?え、羽流!?うそどうしたの?!」
目線の先の立ち尽くした奈津がいるのを見た時、私の感情はもうそこまで溢れそうになっていた。
乱れる髪も、振動でなびくマフラーも、揺れ動くスカートさえもお構い無しで立ち尽くす私に向かって奈津は走ってきた。
「奈津…おかえっ!!」
ガバッ!!と人目なんて気にすることなく私に抱きついた奈津が涙声で何度も「大丈夫?大丈夫?」と言うから、私はつられて涙声になった。
「大丈夫だよ……ありがとう」
奈津に手を繋がれて私は奈津と一緒に家に戻った。
すると、玄関で母が心配そうな表情で私の姿を見た途端に眉は八の字、目はうるうるになりながら私を抱きしめた。
ああ、私ってこんなに周りに心配かけて今日まで過ごしてきてたんだ。
家に閉じこもって自分ばかりで、見えていたようで周りの気持ちなんて見えてなかったんだ。
怖いとか、不安になるとか周りだってきっと抱きながら私の傍にいてくれてたんだ。
沢山のもしもを考えながら、沢山のかもしれないを想いながら、それでも口に出さずに、ずっとただじっとあの日から見守ってくれていたの?
苦しいのは、泣きたいのは、自分ばかりだと思っていた。
奈津だって、お母さんだって、こんな私を見ていることしか出来ないのはきっと苦しかったんだよね…