明日キミに聴かせたい
そして夕方、私は再びマンションの外まで来て三段ほどある階段に座っていた。
通り過ぎていく制服を身にまとった学生やランドセルを背負って走り去る数人の小学生とスマホ片手に誰かとお喋りしながら歩くスーツ姿の男性たちを横目に、一人微かに震える手に触れながら呪文のように「大丈夫大丈夫」と呟いた。
意を決して立ち上がった時、見慣れた制服に私は思わず目を逸らした。
自分の部屋のクローゼットに掛かったままの高校の制服を身にまとい、上から黒のピーコートと青のチェックマフラーを巻いた女子が数人でキャッキャッと盛り上がりながら歩いてきた。
"あははは~"
消えろ消えろ消えろ消えろ!!!!
話に夢中な女子たちは私なんか見向きもせずに通り過ぎて行った。
その後ろ姿をちらっと目にした私は、少し大きく息を吐いた。
笑い方だってきっとみんな違う。違うはずなんだからいちいちビクビクしなくていいんだって自分に言い聞かせながら私はもう一度前を向いた。