明日キミに聴かせたい
「白神さん、コウに会えて良かったね」
「は、はい。花瀬先輩も…」
「殴ろうとしちゃったけどな。あはは」
会話が生まれては途切れて続かない私たちの頭上からゆっくりと静かに舞い降りた白い雪が、もうすぐ終わりゆく1年を白く染めようとしていた。
「雪……」
「だな」
「明日は積もりますかね?」
「どうだろう。この感じじゃ積もらな…っ!!」
「きゃっ!」
雪はまだ舞い降りたばかりでアスファルトは凍ってもいないし、何もない綺麗な道で私は転びそうになったけれど、ギリギリのところで花瀬先輩が腕を掴んでくれたおかげで転ばずに済んだ。
「あ、ありがとうございます」
「なぁ白神」
「はい?」
「年明け…初詣一緒に行かね?」
その言葉が私の耳に届いた時、私の腕を掴む花瀬先輩の手に少しだけ力がこもったのを感じながら私は静かに頷いた。
「お、おう。じゃあ時間はまた送るから」
「はい…」
歩き出した先輩の手はゆっくりと私の腕から手に下りて、優しくそっと私と手を繋いだ。