明日キミに聴かせたい

こんな大きな湖の中からそんなもの見つかるわけないし、そもそもそんな話し嘘か本当かもわからないのに何言ってんのこの人たち。と、湖と彼女たちを交互に見ながら私は後ろへと歩き出した。


「大丈夫!白神なら出来るよ~」

「そうそう!」

「白神なら出来るんじゃないの~?神の子だし」

「い、や……無理…」

「いけいけし~ら~か~み~あははは」


その時、誰かが後ろから私を押した。
そして笑い声が水の音と共に私の耳に入っては消え、入っては消えを繰り返し、自分の身に起きた出来事をすぐに理解出来ずにいた。

乾いていたはずの髪が濡れている。
口の中がやけに苦しい。
手足が重くて体がどんどん冷たくなっていくのがわかった。
息が上手く出来ない。

静かにすうっと力が抜けて沈んでいくような気がして、初めて自分が湖に落とされたとわかった。

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