明日キミに聴かせたい
車内でドライヤーなんて使うの初めてだな。と思いながら髪を乾かしていると、男性は運転席に移動して車を走らせた。

乾いた髪に触れながら、私はそのままドライヤーで制服を乾かした。


「もうすぐ駅だけど家まで送ろうか?」

「あ、い、いえ、駅までで…大丈夫…です…」

「そう?わかった」


そう言うとしばらくして近くの駅前で停車してくれた男性は後ろに乗る私を見るなり「大丈夫?」と心配そうな表情で声をかけてくれた。

「大丈夫…です。ありがとうございます」と車を降りると、運転席の窓を開けた男性は「ごめんな」と言った。

その言葉の意味を私はなんとなくわかっていたから何も言えなかった。

駅に向かう足はもう乾いて何もないはずなのに水がまだ付いているように重く感じた。

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