明日キミに聴かせたい

すると先輩は私の髪に触れながら「寝顔可愛かったよ」と言った。

お世辞でも嬉しすぎて発狂しそうになるのを抑えながら私は「ありがとうございます」と呟いた。


「……加山さんがさ、白神さんを大事に想うように、俺も名雄が大事なんだ」

「・・・」

すっと顔を上げると、伏本先輩は少し真剣な顔をして話していた。

「だからって名雄のすること全部わかってほしいとかそういうんじゃなくて、あいつのしたことちょっと怒られても無理ないし、ははは。だけど白神さんの事を好きなあいつの気持ちだけはわかってほしいんだ」

「・・・」

「加山さんだって、白神さんが恋したら応援してあげるでしょ?」

「あ…」


ガラッと教室のドアが開いた音がして目を向けると、花瀬名雄が立っていた。

その姿を目に、私は鞄を片手に後ろのドアから教室を出て、走った。

「加山さん!!」の声に振り向きもせず、ただまたも逃げるように走った。

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