リングサイドブルー
千晃は新旧入り混じった街を見渡して、ここならばランチにも仕事のあとの飲みにも困ることはないだろうと、どこか他人事のような感想を抱いた。

 左手の中ある小さなぬくもりに愛おしさを感じながら、千晃は石畳を歩いた。心暖は路面店がずらりと並んだ景色に目を輝かせている。

 和菓子屋の前に置かれた見本入りのガラスケースの前で、心暖の歩みがゆっくりになり、やがて止まる。艶やかなたれの質感がリアルな、みたらし団子の食品サンプルが気になるらしい。

(誰の影響だかなあ。それとも、女っていうのは甘いものが好きな生き物なのか?)

「ほら、先に会社見に行くよ」
 千晃が手を引くと、心暖は名残惜しそうに視線を引きずった。

 車の行き交う大通りからJRの駅に向かい、そこから線路沿いの脇道に入る。このあたりはオフィス街で、休日にもかかわらずスーツ姿の男女も目に付く。
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