リングサイドブルー


「戻りました」

 休憩室から戻った千晃は、システム課の自席にひとり居残りしていた橋爪に、一応声をかけた。食後のコーヒーを啜っていた橋爪が、眉間にしわをよせたまま顔を上げた。

「おい」
「はい?」

「首藤、旦那と子どもいるからな」
「はあ? 知ってますよそんなことくらい」

「本社にゃいねーけど、旦那もこの会社の人間だから気をつけろよ。女どもは噂話好きなやつも多いからな」

 いったい情報源はどこだ。くだらない勘繰りに呆れていると、橋爪が鼻を鳴らした。

「隣の課のK谷栞那とかな」

「それ、ぜんぜん伏せてないじゃないすか。つーか、みんな暇っすよね。他人の噂話とか、どうでもいいし。俺は仕事の続きやります。こっちは仕事以外も忙しいんで、残業なんてしてる暇ないんすよ」
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