リングサイドブルー
「えっ、ちゃっきー子供いんの?!」
 優月の口から漏れた叫びが、始業直前の総務部内に響き渡った。優月の目が千晃の左手に向かう。

「あ、子供はいるけど俺はシングル」千晃は自嘲気味に笑った。
「なんでそれ黙ってたの。もっと早く知りたかったよー、この情報」

「上辺では色々気遣ってもらえるけど、男の場合はそういう事情を特に理解されないの分かってるし、……フリークスタンダードと仕事するのに、子供を言い訳に使いたくなかったんで。だから俺もやりたくなくて勉強しなかったわけじゃ――」

「いいなあ、ちゃっきー!」
「……はあ?」戸惑う千晃に、
「ねえねえ、写真ないの?」優月はデスクを指先で叩きながらせがんできた。

千晃はしぶしぶポケットからスマートフォンを出し、写真フォルダを開いて優月に渡した。夏に撮った心暖の写真だ。
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