さざなみの声
クリスマスプレゼント


 秋は既に終わって十二月になっていた。街はどこもかしこもクリスマス気分。店のディスプレイにも、あったかそうなコートが並ぶ。

 あの日、みゆきの結婚式の日にシュウが言った言葉が気になっていた。寂しそうに見えた。そう言われた。みゆきも結婚して幸せそうだ。麗子もジューンブライドらしい。

 啓祐と私には、そんな日は来ない。分かってる。愛しても愛されても、その先には何も無い。いつか来るのは別々の道。一緒には歩けない。

 もうすぐクリスマスというある日。夕方と言っても既に暗い時間。

「いらっしゃいませ」との店長の声に振り向くとシュウが

「きょうはクリスマスプレゼントを選んでもらおうと思って」

「ありがとうございます。母の日の時も、いらしてくださいましたよね」と店長。

「覚えていてくださったんですか? 母にも義姉にも、とても喜ばれました」

「ありがとうございます。寧々ちゃんの……?」

「あっ、はい。大学時代の友人なんです」

「そうでしたか。じゃあ寧々ちゃん見立ててあげてね」

「はい。店長。きょうは、どのような物がよろしいですか?」

「そうだな……」とシュウと選んでいると

「こんばんは」啓祐の声。

「課長、用意出来ております。こちらですね」

「そうそう。これの色違いを誕生日にプレゼントしたら妻がとても気に入って友達にも褒められたらしくて色違いも欲しいなんて我が儘を言うもんだから。本社にも、もう在庫もなくて調べてもらったら……」

「ここに、ございましたので、お取り置きさせていただきました。本当に最後の一着ですよ。お役に立てて良かったです」

「助かったよ。本当に。じゃあカードで」

「はい。かしこまりました。少しお待ちくださいませ。こちらが明細になりますので。ありがとうございました」

「ありがとう。じゃあ」
 啓祐さんは帰って行った。

 私は啓祐さんを見ないようにシュウのプレゼントを選んでいた。柔らかくて上質なニットを二点、プレゼント用にラッピング。

「いつもありがとうございます」と店長。
「よかったら、また感想をお聞かせくださいね。寧々ちゃんのお友達なら、いつでも歓迎しますよ」

「ありがとうございます。また伺います」
 シュウも帰って行った。
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